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昔好きだったコトを中心に、思い出しては綴ってます
by fan-an
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おばあちゃんの家  ---  韓国映画

今日は、久しぶりに好きな映画の話をする。
映画のタイトルは「おばあちゃんの家」(韓国語タイトル:「家へ・・・」)。
3年前の3月末、桜がもう満開の頃、東京は千代田区神田の「岩波ホール」というミニシアターへ、この映画をひとりで見に行った。 私はミニシアター物の地味?な映画が好きなので、必然的に相手を募集するまでもなく、ひとりで映画館に足を運ぶことが多い。 けれどこの岩波ホールに行くのは初めてだった。 見ようとする時間帯が満席だったことに驚き(確かに新聞などで宣伝されてはいたけれど、家族をテーマとした地味な韓国映画の為、そんなに観客がいるとは思わなかった)、次の上映時間までの時間をどこで潰そうかと思い、ホールのある神保町から靖国通りを歩き、武道館前の皇居の桜を見に行った。
何だか懐かしい。

ところでこの岩波ホール、実はかなり私好みの映画を上映していることが分かり、うれしくなった。 HPを見ると、上映映画の選出には下記の4つの点に重きを置いているそうだ。

•日本では上映されることの少ない、アジア・アフリカ・中南米など欧米以外の国々の
 名作の紹介。(その後、女性監督による作品も積極的にとりあげるようになる)
•欧米の映画であっても、大手興行会社が取り上げない名作の上映。
•映画史上の名作であっても、何らかの理由で日本で上映されなかったもの。
 またカットされ不完全なかたちで上映されたもの。
•日本映画の名作を世に出す手伝い。

過去の上映履歴を見ると、私がビデオで鑑賞済みや見たかった映画がいくつもあった。
上記のほか、“老い”をテーマにした映画も多く取り上げているとのこと、なるほど、今回の映画「おばあちゃんの家」は、”韓国(アジア)、女性監督、おばあさん”と岩波ホールの上映テーマにぴったり合っている。 そんなことに妙に感心しながら、映画を鑑賞したことを思い出す。

さて、やっと本題だが、「おばあちゃんの家」・・・・・この映画は、イ・ジャンヒョン監督が、子供の頃、自分の大好きだったおばあさんに冷たくしてしまった記憶を元に、贖罪の念と愛情を込めて長年かけて構想、やっと上映を実現させた思い出の映画である。 ただし、残念なことに一番見て欲しかった当の監督のおばあさんは、その上映を待たずして他界してしまったという。 以前にもブログに書いたが、私自身も祖母に対して贖罪というと言い過ぎかもしれないが、後悔している思いがあるので、この手の話はちょっとヤバいな~とハンカチとティッシュを用意して映画館に向かった。 ひとりだから気楽に泣けるので、
準備万端!である。
ストーリーは、母親の仕事が見つかるまで、母親の田舎に預けられる少年サンウと彼の祖母の話。 ソウルから来た現代っ子のサンウは、話ができず、読み書きができない田舎者のおばあさんを馬鹿にして、ゲームばかりしては時間を過ごし、おばあさんの言うことを全くきかない。 頭を触ろうとしたおばあさんに対して、「汚い、さわるな!」と言ってみたり、ゲームの電池を買おうとしておばあさんのかんざしを盗んでみたり、山の中の村なのに、おばあさんを困らせようとわざとケンタッキーフライドチキンが食べたいと言ってみたり、もう本当にハタキたくなるほど憎らしいガキなのである。
監督はこの少年のモデルは自分自身だと言う。
けれど、実際に自分が祖母にした仕打ちはもっと酷かったと。
やがて、そんなサンウに変わらない愛情を示すおばあさんに、サンウは少しずつ心を開いていく。 一番の圧巻は、映画の最後、サンウが仕事の見つかった母親に連れられてソウルへ帰る時。 おばあさんに絵を描いた葉書を何枚も渡す。 具合が悪い、会いたい、元気ですか・・・? そんな言葉を意味する絵が、1枚に1つずつ描かれている。 宛先はサンウの住所。 不思議そうに見るおばあさんに、具合が悪い時はこの葉書、僕に会いたい時はこの葉書・・・・・とその時の状況によって、この葉書をポストに入れてほしいと頼む。 始めがとんでもない子供に描かれていたので、この変わりっぷりに余計涙である。

この映画のキャスティングだが、本物の役者さんは何とこの憎らしい少年、サンウだけであった。 おばあさんを含む残りのキャストは、脚本通りの素朴なイメージを大事にする為にスタッフが全国に飛び、イメージに合う素人を探して回った。 けれどなかなか思い通りのキャストが見つからない中、監督が「そこへ行けばこの映画のおばあさんに会えるような気がする」との予感のもとに訪れた村で、まさにこのおばあさん役を見付けたそうだ。
場所は、韓国の真ん中、忠清北道という地域の“永同”という村。 韓国人の友人にきくと、この地域は言葉を非常にのんびりゆっくり話す地域だそうだ。 私も付近の“沃川”という村へ行ったことがあるが、田んぼや畑の真ん中を川がゆっくり流れ、子供たちが大はしゃぎで川遊びをしていた。 日本の田舎と全く変わらない、のどかで温かい光景だった。
当のおばあさん役のご本人は、映画に出るどころか、映画を見たことすらないという素朴なお年寄り。 他に出演したキャストもほとんどがこの村の人々ばかり。
普段のありのままの生活を再現している為か、素人なのに全く違和感なく、下手な役者さんの映画を観るより断然良いのである。

これだけ素晴らしい映画をおばあさんに贈った監督。 これ以上のおばあさん孝行はないとちょっとうらやましくなった作品である。 おばあさんに特別な思い入れのない人には、普通の家族映画に思え、ちょっと物足りなさを感じるかもしれない。 けれど大切な思い出のある人、私のように後悔の念が絶えない人には、かなりヤバい映画です。 たくさん泣いてしまう恐れアリなので、ひとりでビデオを借りて部屋を真っ暗にして、ティッシュケースを横に置いて見ることをお勧めします。
おばあちゃんの家  ---  韓国映画_f0032991_23271813.gif

by fan-an | 2006-03-10 23:31 | 映画・テレビ
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